
「水曜日のふくろう」
大嵐のあとだった
風に巻き上げられたまだ緑の葉は
地面にはりついたまま 踊り疲れて眠っていた
静まり返った時間 夜と朝のあわいに
一羽のふくろうは忙しく働いていた
南のほうと東のほうに
知らせを持っていかなきゃならない
ふと目が覚めたとき まだ外は暗かった
生まれたてのしずくが落ちて光る音がした
あるいはそれは朝露だったかもしれない
また目を閉じると
遅れた風があわてて頬をなでていった
あたらしい秋の匂いがした
ふくろうは戻ってきた
年とった銀杏の樹の肩で休んで
まばたきを二回と 大きな身ぶるいを一回
ホーホーホーと三回鳴いた
私は 水曜日に生まれた
大嵐のあとだった
![]() |
profile
坂元小夜(Sayo Sakamoto) |

「金曜日のクラゲ」
デイトストリートから
夕闇に溶けるワイキキを見おろして
自転車で坂道を駆けぬけたんだ
紫がオレンジを飲みこんだとき
滲んだ月が 電線の隙間を流れた
もうすぐキミに会える 金曜日の夜
世界はどうしてこんなにきらめいているの?
自転車にのって ボクは風になる
口ずさむのは ゴキゲンなオザケン
渋滞のカパフルアヴェニュー
ヘッドライトの波間をぬって
自由に泳ぐ ボクはクラゲ
オーバーラップする光
クラクション 甘いドーナツの匂い
ちょうどいいスピードで
陽と闇のあいまを泳ぐボクは
自転車に乗ったクラゲ
ここだけのハナシ 信号は目安
うかれた対向車の 眩しい残像のカケラ
いつかのにぎやかな金曜日
ボクがこの世界から消えるとき
キミのまぶたの奥に
細い光の道筋が見えるだろう
大好きなキミの名前を呼ぶよ
自由に泳ぐ ボクはクラゲ
キミのまばたきの間だけ
闇を白く照らすだろう
![]() |
profile
潮 千穂 (Chiho Ushio) |




Copyrights © 2010 Web magazine makana All Rights Reserved.