009 渡辺礼人



今回のインタビューは、1年ぶりに男性の登場です。それもお花男子!ウェブサイトのアーカイブにあった写真を見ると、なんとも花が花らしく、色鮮やかで、文字通り華やかなアレンジやブーケを見て、これを男性が作っているなんて、きっとかなりこだわりがあって、自分の世界を持った繊細な人なんだろうな、と思って会いに行ったら、、、とっても気さくで、楽しいひとでした!

まず、花屋を始めたきっかけは何ですか?

ぼくは、実は美容師をしていたんです。新潟で高校を卒業して、どうしても東京に来たかった。ちょうどその頃は、カリスマ美容師が話題になっているようなときで、その世界に憧れて上京して美容師学校に通い、その後美容室に就職して5年ほど働きました。でも、少しずつ違うなって思い始めて、仕事を続けるのがつらくなってしまった。自分はこれが天職だって無理やり言い聞かせてたんですけど、やっぱり続けられなくなってしまって。

それでどうして花屋に?

美容師を辞めて、自分が好きなことを仕事にしたいって思って、僕は何が好きなんだろうって考えたんです。そうしたら、「あ、花柄が好きだ」って思って、じゃあ花屋で働いてみようかって思ったんです。

花柄って、生地の花柄ですか? それがきっかけで花屋に?

そうです。さすがに着ることはないけど、昔から花柄が好きで。それで花がいいかもって笑。ホテルに入っているような大きな花屋に就職したんですけど、仕事はつまらなかった。各地に支店のある大きな、しかもいわゆる高級な花屋だったんですが、仕事といえば、出来上がった花のアレンジなどを梱包して出荷することをひたすらやっていました。それでも、毎朝花瓶の水を変えるんですが、その時だけ花に触ることができたんです。だから、毎日新しい花の名前を覚えるようにしたり、花に触るのを楽しみにしていました。2年くらい働いたとき、都内の高級ホテルに入っている店舗への異動の話があったんです。ウェディングや宴会の仕事を時間刻みでこなすようなホテルで働くのは、美容師時代にも時間の制約とは戦ってきたし、それをまたやるのは難しそうだと思い、ホテルだったら髭も剃らなくちゃいけないでしょ笑。それで、辞退することにしたんです。それがきっかけで、その花屋を辞めることになり、他の花屋をいくつか転職活動したんですけど、うまく行かなくて。それが28歳のとき。そのときにたまたま美容師時代の知り合いがやっている中目黒のカフェに遊びに行ったら、「じゃあ、うちの店の外にある通路で自分の花屋やってみたら?」と言ってくれて、それが今この店の場所なんですけど、まさかその時点で独立は考えてなかったし、最初は全然前向きに考えられなかったんです。でも、よく考えてみたら、スペースが小さいということは初期投資が多くかからないし、中目黒という場所にはポテンシャルを感じていたし、自分と同じ若い世代が花に対する意識が変わっていくようなことができたら、それってかっこいい。そう思って、やってみようかという気になったんです。

farverというお店の名前の由来は?

2009年の12月に前の花屋を退職して翌年の3月にオープンしたんですが、最初は転職しようと思ってたわけだから、実際の開店準備は1ヶ月くらいしかなくて、たまたま友人に誘われたグループ展で出会ったデザイナーさんの花の絵がすごく素敵で、その場でお店のロゴマークのデザインをお願いしたんです。その時点ではお店の名前も決まってなくて笑。じゃあ2〜3日で名前決めて連絡しますって言って、インターネットの翻訳サイトで調べて、farverを見つけたんです。デンマーク語で「彩り」なんですけど、小文字だと字面も柔らかいし、じゃあこれにしようって。

もうすぐオープンして2年ですが、これまでの道のりはどうでしたか?

前のお店でお客さんがついていたというわけでもないし、全くゼロからのスタートで、正直かなり不安でした。けっこう追いつめられて、精神的にも不安定になっていました。ところが、あるときたまたま通りがかりの方が、気に入ってくれて、あとで、その方が有名な元スタイリストさんだったことが分かったんですけど、そこからその方の周りの、たとえばカメラマンの方とか、洋服のブランドの関係の方とかに紹介していただいたりして、少しずつお客さんが来てくれるようになって。嬉しかったですね。それは、中目黒という場所だからできたことだと思います。

そんな中、ステキな出会いがあったとか?

はい。同じ中目黒にある、TORiというカフェ(http://www.cafetori.com)をやっている二人との出会いです。彼女たちと僕のfarverはオープンが同じ年で、しかも2日違い。年齢もひとつしか離れていないと共通点が多くて。彼女たちがお客さんをたくさん紹介してくれたし、ケータリングのときの装花に使ってくれたり。花屋は朝が早いでしょ。お酒を飲むタイミングがないから、営業中に少し飲んだりしちゃったりして、その方がリラックスしていいものが作れるって言うのもあるけど、飲んでないとやってられないっていうところもあって。でも、同じ界隈で同じように頑張っている同世代の仲間ができて、すごく励みになったんです。2011年の3月にはTORiで一周年のパーティをさせてもらうことになり、でもまだその時はお店もまだ全然安定してなくて、パーティの直前はプレッシャーもあってすごくやつれてしまった。ある朝鏡を見たら、もう、それはそれはひどい顔をしていて、あぁ、こんな顔をしていたらお客さんも来ないよな、ってふと気がついて。手をパンパンって叩いて、不安をお払いするような気分で気持ちを切り替えてから仕事に出かけたら、その日はびっくりするくらいお客さんが来てくれて。不思議ですよね。でも、僕、けっこう精神的に強くなくて、不安でしょっちゅうぎりぎりのところまで行くけど、いつも周りのひとに助けてもらってる。精神面の不安は、新しい仕事を経験していくことで補っているような気がします。同世代の仲間たちとお客さんのおかげ。僕はひとに恵まれてるんだと思います。

その一周年のパーティが一つの転機になったそうですね。

はい。TORiのお店のディスプレイも思った通りのものが作れて、みんなに「おめでとう!」って言ってもらえて、本当に幸せでした。あぁ、これならやっていけるかもしれないって。安心したんです。やりたいことをやらせてもらってる。あぁ、幸せだなぁって。

礼人くんの作るお花は独特の世界がありますが、何かいつもお手本にしているものや、イメージソースはありますか?

それが、特にないんです。たとえばパーティなど空間を使うときも、あんまり事前にプランを作ったりしないんです。その日に仕入れに行って気に入った花で、さぁなに作ろうって思った方がいいものができるし、自分の作りたいものはだいたい頭の中に出来上がってるから。

今年で3年目となりますが、今後の目標はありますか?

オープンして以来、毎年今年は幸せだったって思えているので、2012年はもっと幸せであるように頑張ります。具体的には、farverの世界観をもっと外に向かって打ち出していけるようにしたい。あとは、お店を移せたらいいなって思っています。もちろん中目黒ですけど。ウェディングやパーティの仕事ももっと経験したいですが、お店もないがしろにはしたくないんです。僕は中目黒のお客さんたちに支えられてきたから、ふらっと寄ってくれる、そのお客さんたちをがっかりさせたくないと思っています。

インタビュー中に何度も出てきたのは、「恵まれている」や「○○のおかげで」の言葉。今自分がここにいるのは、自分だけの力じゃないって思っているところに脱帽しました。独立して2年。リアリティのある苦労話を聞きながら、思いがけないチャンスに挑戦し、不安と葛藤と、そのあとに必ずやってくる幸せ、その繰り返しを経て着実に自信をつけてきているんだなと実感。とにかく、仲間とお客さんと、この中目黒という場所をこよなく愛していることがひしひしと伝わってきました。farverはちょっと変わった店構えですが、そこはワンダーランドの入り口です。中目黒へ行ったら、ぜひ、不思議の国をのぞきに行ってみてください!

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Profile

渡辺礼人(わたなべあやと)
フラワーデザイナー
新潟県出身。上京後美容師として勤務したのち、花屋の道に転向。2010年に独立して中目黒にferverをオープン。ウェディングやパーティなどの装花なども手がける。どんな会場でもまるで別世界を作ってしまう独創的なインスタレーションが注目を浴びている。
〒153-0051
東京都目黒区上目黒1-11-1
Tel: 03-5489-8683
Fax: 03-5489-8701
Mail: info@farver.jp
http://www.farver.jp

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